孫争奪戦――祖母たちには、負けられない戦があった

Moiraの記憶

時代は古く、バブルのころに遡る。

私の住んでいた地域には、毎年、稚児行列を行うお祭りがあった。

子供たちが衣装を着て、化粧をして、祖父母や親に手を引かれながら山車とともに歩く。

子供にとっては、お祭りである。

しかし祖母たちには、別のものが見えていた。

負けられない戦が、そこにはあった。

稚児行列、誰が誰を連れて歩くのか

叔父のところには、孫が一人。

なかなかの聞かん坊主である。

こちらは叔母のところのおばあ様が、泣く泣く手を引くことになった。

そして我が家には、私と妹。

ここで戦うことになったのが、

舞い代表・父方の祖母。

対するは、

お華代表・母方の祖母。

二人の祖母による、静かな戦いが始まった。

争点はただ一つ。

どちらの孫の手を引くか。

狙うは、私

当時の私を並べてみる。

大人しい。

勝手な行動はしない。

言うことは聞く。

走らない。

ゆっくり動く。

稚児行列という、衣装を着せ、化粧をした子供を連れて歩く行事において、なかなか扱いやすい幼児だったと思う。

では、対抗馬である妹はどうだったのか。

走る。

衣装を取る可能性がある。

化粧を取る可能性もある。

何をするか分からない。

予測不可能。

どう考えても、狙うなら私である。

勝負は一瞬だった

化粧をしてもらい、衣装を整え、私たちが出てきた。

その瞬間だった。

パッと私の手を取ったのが、舞い代表・父方の祖母。

早い。

勝負はもう決まった。

その後、父方の祖母は私の手を引きながら、終始、自慢げにゆったりと稚児行列を歩いていたそうである。

一方。

お華代表・母方の祖母に残されたのは、

やけにテンションの高い妹。

走る。

追いかける。

また走る。

また追いかける。

稚児行列というより、追跡戦である。

無事に終わったころには、母方の祖母は足腰に痛みが出ていた様子だった。

舞い代表、悠々と行進。

お華代表、孫を追跡。

同じ稚児行列に参加したはずなのに、運動量がまるで違う。

あの日の祖母たちの戦いは、最初に私の手を取った時点で、ほぼ決着していたのかもしれない。

毎年あった、お祭り

そのお祭りは、一度きりのものではなかった。

毎年あった。

当時は、また来年もあるものだった。

衣装を着て。

化粧をして。

山車が出て。

子供たちが歩いて。

大人たちがその手を引く。

そしてその裏では、祖母たちによる小さな孫争奪戦もあった。

あれほど毎年そこにあったものなのに。

時間が経つにつれて、そのころの景色も、祖母たちの姿も、少しずつ遠くなっていく。

鮮明だったはずのものが、いつの間にか輪郭を失っていく。

毎年あるお祭りだったのに。

いつの間にか、その記憶も水泡のように淡くなっていきました。

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