電話占いという仕事をしていると、お客様の声以外にも、いろいろな音が聞こえてきます。
テレビの音。
流し台で何かを洗っている音。
中には、お風呂に入りながら電話をしてくる猛者もいます。
まあ、そのくらいならいいのです。
こちらも長くやっていますので、少々の生活音には驚きません。
ただ、ときどき。
ガシャン。
何かが割れたような音。
ドン!
何かを投げたような音。
そんなものが電話の向こうから聞こえてくることがあります。
そういうときは、さすがに占いどころではありません。
「……大丈夫ですか?」
まず確認します。
占い師だからといって、何でも占いで判断するわけではないのです。
本当にあった、ちょっと怖い話
むかーし、むかーしのこと。
あるお客様と電話でお話をしていたときのことです。
話しているうちに、ふっとチャンネルが合いました。
これは本当に稀なのですが、相手のいる場所が見えてしまうことがあります。
仏間が見えました。
そこから家の中が見えて、ぐるりと見て回るような感覚になりました。
決して汚い家ではありません。
ただ、物が多い。
ずいぶん物の多いお宅だなあと思っていると――
突然、低い男の声がしました。
「片付けろ! 片付けろ!」
プツン。
そこで家の中は見えなくなりました。
…………。
怖い。
おそらく、ご先祖様からの御言葉だったのでしょう。
とはいえ、お客様に、
「今、低い男の声で『片付けろ!』って怒鳴られました!」
なんて言って怖がらせても仕方ありません。
なので私は、できるだけ明るくお話ししました。
「仏壇も開けて、お部屋の換気をして、少し光を入れてみてくださいね」
そして、せっかくなのでお片付けの方法も。
箱を三つ用意します。
いるもの。
いらないもの。
今は決められないもの。
この三種類に分けていくと、片付けやすくなります。
「お片付けにはおすすめですよ」
そんな話をして、その鑑定は終わりました。
明るく話していましたが、
私は怖かったです。
もっと困る「……ん?」もあります
怖いといえば、別の種類の怖さもあります。
普通にお話をしていたはずなのです。
仲の良い人について。
あるいは恋愛について。
ところが、話しているうちに突然、
「念が入ってくるんです」
「彼の気持ちが解るんです」
という話になることがあります。
ここで私は、
「……なぜ、占い師のところへ来た?」
となります。
こういうときに難しいのは、占い師である私が、
そのお話をそのまま「霊的な事実」として肯定してしまってよいのか、ということです。
私は医師ではありません。
診断もできません。
一方で、お話の内容によっては、占いで答えを出すことより、
専門家へ相談することを考えてほしい場合があります。
ところが、そういう方ほど聞いてくださらないこともある。
これは長くこの仕事をしていても、難しいところです。
占い師だからこそ、何でも占いにしない
電話の向こうから変な音がしたら、
「何か悪いものがいます!」
ではなく、
「大丈夫ですか?」
と聞く。
不思議なものを感じたとしても、必要以上に怖がらせない。
そして、占いで扱うべきではないと思ったことまで、無理に占いへ持ち込まない。
不思議なものを扱う仕事をしているからこそ、
何でも不思議なものにしてしまわない。
案外、そんなところも占い師には必要なのかもしれません。
Moira

