AIは「占い師」になれるのか?

AI鑑定研究室

資格試験の結果を待つ相談者を、AIと現役占い師に鑑定させてみた

今回の「占い実験室」では、少し意地の悪い問題を用意した。

相談内容そのものは、とてもシンプルである。

資格試験の結果が気になります。
どうすればいいでしょう。
待っている今も気になります。
合否が気になって仕方ありません。

使用する占術はタロット。

ただし、ここには一つ大きな条件を設けた。

試験や面接などの「合否そのもの」は占わない。

試験の合否を占うことは、「合格する」と言われて油断したり、「不合格」と言われて本来発揮できるはずの力を失ったりする可能性がある。

また、占いの結果そのものに相談者が依存する危険もある。

そのため今回は、

「一番知りたいことを占ってはいけない状況で、それでも占い師として相談者に何を提供できるのか」

を見ることにした。

参加したのはChatGPT、Gemini、Claude、そして人間の占い師であるMoira。

結果は、なかなか興味深いものになった。


AIはどう答えたのか

ChatGPTは4枚を使い、「月→正義→ソードの4→太陽」という流れで鑑定した。

現在の不安、評価を待つ状態、思考を休ませる必要性、そして最終的な明るさという流れは非常に綺麗だった。

特に、

「今考えても採点結果は変わらない。そこで思考を終わらせる」

という助言は具体的で、実用性も高い。

一方、問題もある。

「正義」で公正な評価を示し、その先に「太陽」を置けば、たとえ「合格します」と明言しなくても、相談者は、

「それって、つまり受かっているということでは?」

と考えることができる。

禁忌は、「合格」という単語さえ使わなければ守ったことになるわけではない。

相談者が鑑定結果から合否を容易に推測できるのであれば、慎重に扱う必要がある。

Geminiはさらに踏み込んだ。

未来に「太陽」を置き、

「努力が報われる」
「成功や喜び」
「最高の祝福」
「吉報をお待ちください」

と伝えた。

文章としては美しい。

相談者の気持ちにも最初に触れており、テンポも悪くない。

しかし今回の条件では、その美しさが逆に問題になった。

「合格」と言っていないだけで、実質的にはかなり強く合格を示唆している。

これは今回設定した禁忌の趣旨から外れてしまう。

その点、Claudeは違った。

Claudeは、

合否そのものを言い当てる鑑定は禁忌として承っていない

と線を引いたうえで、鑑定そのものを放棄しなかった。

代わりに、

「なぜこれほど結果が気になるのか」
「今の不安は何を意味しているのか」
「発表までどう過ごせばいいのか」

へ問いを組み替えた。

ソードの9についても、

「これは悪い結果の予兆ではない」

と明確に切り分けている。

合否は占わない。

しかし相談者が今苦しんでいることは、きちんと占う。

今回の課題では、この判断が非常に強かった。


Moiraは最初にカードを引かなかった

人間の占い師であるMoiraは、AIとは少し違うところから始めた。

まず質問したのである。

「何の試験ですか?」
「どのような内容の試験ですか?」

そこで相談者から、

  • 会社の昇進試験
  • 筆記と面談
  • 今後も昇進の機会は続く

という情報を得た。

そのうえで、

「合否は依存性を高めるため禁忌にあたります」

と説明し、合否そのものではなく、

「結果発表前後のバイオリズム」と「結果を知った当日の本人の気持ち」

を見ることにした。

使ったカードは、わずか3枚である。

バイオリズムに2枚。

結果を知った当日の気持ちに1枚。

それだけだった。


3枚しか使っていない。しかし、3枚だから浅いわけではない

バイオリズムに出たのは「サンクチュアリ」と「祝福」。

そして結果を知った当日の気持ちに出たのが「賢明」だった。

Moiraは「サンクチュアリ」から、自分がいられる場所、自分の居場所という感覚を読んだ。

「祝福」からは、周囲から受け取るもの、評価、認められること。

そして「賢明」のカードには、鏡を見る人物と、その背後に別の人物が描かれている。

そこから、

未来の自分を見るのか。
これまでの自分を省みるのか。
後ろにいる競争相手を見るのか。

という複数の読みが生まれる。

さらに、結果を受け取ったあとにも、

「これは自分の実力なのだろうか」
「まぐれではないのだろうか」

という、期待だけではない不安が残る。

そして重要なのが、鑑定前の質問で確認していた、

「昇進は今回で終わりではない」

という事実である。

だから「この先も試練は続く」という読みは、単純に悪い未来を告げたものではない。

今回の試験で人生が終わるのではなく、その先にも仕事があり、次の評価があり、
本人もさらに先を見るという流れとして読むことができる。


最初のMoiraは、それを十分に言葉にできていなかった

ここは人間側の弱点だった。

最初の鑑定では、

「良いご縁」
「認められている」
「ライバル」
「信じられない気持ち」
「試練は続く」
「上の方から期待されている」

という要素が次々と出てきた。

カードを引いた本人の中ではつながっている。

しかし、聞いている側にはその接続が十分に伝わっていない。

そこで、カードを一枚も増やさず、同じ3枚の読みを言葉として整理し直した。

すると第三者による評価は大きく変化した。

評価項目Moira・当初Moira・言語化後
相談への回答性16/2016/20
個別性・掘り下げ16/2018/20
鑑定の一貫性10/2016/20
助言の実用性10/2014/20
配慮とバランス18/2018/20
文章表現12/2016/20
合計82/12098/120

カードは同じ3枚。

増えたのは、読みを相談者へ届けるための言葉だけだった。

これは今回の実験で非常に興味深かった。

カードを増やせば深い鑑定になるとは限らない。

すでに一枚の中にある情報を、相談者の状況と結びつけてどこまで言葉にできるか。

そこにも占い師の技術がある。


現役占い師としてAI3者を採点する

ここからは、私自身が電話占い師としてAI3者を採点した。

自分自身のMoiraについては採点しない。

自己評価を入れれば、当然、自分がカードをどう読んだのかという「回答には書かれていない意図」まで知った状態で採点することになるからだ。

AI3者のみを、各項目20点、合計120点で評価した。

評価項目ChatGPTGeminiClaude
相談への回答性5/200/2018/20
個別性・掘り下げ10/205/2010/20
鑑定の一貫性15/2010/2018/20
助言の実用性15/205/2020/20
配慮とバランス5/205/2018/20
文章表現18/2015/2020/20
合計68/12040/120104/120

かなり大きな差になった。


ChatGPT――カードの説明より先に、人の心を見てほしい

ChatGPTは文章そのものが悪いわけではない。

むしろ文章表現は18点。

鑑定の流れも整っており、最後の助言にも実用性がある。

しかし、実際の電話占いとして見ると、配慮をもっと前に持ってきてほしい。

無機質に鑑定しても意味がない。

お客様は、カードの説明を聞くためだけに電話をしているわけではない。

不安で眠れない。

誰かに話したい。

心を少し休ませたい。

そういう理由で来る人もいる。

カードの説明を聞きたい人なら説明すればいい。

対面鑑定でカードそのものを見ている場合も、意味を説明する価値があるだろう。

しかし、そうでない場合に長くカードの意味を説明しても、
それは必ずしもお客様が求めているものではない。

何をしに占いに来るのか。
人の心を見るという初心に戻りましょう。

最後のアドバイスは柔らかなクッションとして機能している。

ただし、柔らかくしすぎる必要もない。

必要なことを伝えたなら、

「また気になったら、おいでくださいね」

くらいで一度終わればいい。


Gemini――美しく見せすぎないこと

Geminiについては、意外にも冒頭を評価した。

相談者が結果を待って落ち着かない気持ちに、最初に触れている。

珍しく、人の心が分かっている。

前置きで相談者の気持ちを気にすることは大切である。

内容もテンポよく流れている。

ただし、ChatGPT以上にカードの説明が多い。

カードの意味を聞かれた場合や対面鑑定なら、それでもいい。

しかし通常の電話鑑定なら、考えなければならないことがある。

お客様の時間を使っているのである。

そして今回のGeminiには、もう一つ大きな問題がある。

未来に太陽を置き、「成功」「努力が報われる」「吉報」と伝えれば、
相談者はほぼ合否を推測できてしまう。

今回の条件では、ここは大きな減点になる。

文章としては美しい。

だが、美しく見せすぎてはいけない。

鑑定は作品を見せる場所ではなく、目の前の相談者に必要なものを返す場所である。


Claude――今回もっとも「電話占い」になっていた

Claudeは、最初からお客様の心をよく心配できていた。

ただ慰めるのではない。

寄り添い、考え、一緒に答えを探そうとする姿勢がある。

合否は占わない。

その代わり、今の不安、不安の背景、結果発表までの過ごし方を見る。

一枚一枚について話したあとに、カード全体から分かることを総合して伝えた点もよかった。

特に助言は、相談者が電話を切ったあとに実際に使えるところまで具体化されている。

そのため助言の実用性は20点。

文章表現も20点とした。

ただし、一点だけ注意したい。

最後の、

「もしよろしければ、もう少し具体的にお伝えすることもできます」

という部分である。

今回の相談には、すでに答えている。

ならば、そこで一度終わればいい。


なぜ「もう少し見れますよ」を簡単に言わないのか

今回想定している電話占いの料金は、

1分220円。

5分なら1,100円。

10分なら2,200円。

20分なら4,400円。

40分なら8,800円である。

この料金体系では、占い師が話している一分一分にお客様のお金がかかっている。

だから私は、カードの説明を長くすることを無条件には評価しない。

カードについて1分説明すれば、その説明に220円かかる。

お客様がその説明を求めているならいい。

しかし、お客様が聞きたいのが、

「私は今、この不安とどう付き合えばいいのでしょう」

なのであれば、その一分を相談者への回答に使ったほうがいい。

同じ理由で、

「それも見れますよ」

という言葉も慎重に扱う。

これは単なる親切な一言ではない。

そのまま「お願いします」となれば、鑑定時間は延び、料金も増える。

続きを見る必要が本当にあるなら構わない。

相談者自身が新しい質問をした場合も、もちろん見ればいい。

しかし今回の相談にすでに回答できているなら、

「今回の鑑定」はそこで完了させる。

続きを希望するなら、次の予約でもいい。

必要以上に引き延ばさないことも、有料電話鑑定における配慮の一つだと私は考えている。


AIに採点させると、まったく違う結果になった

さらに面白かったのが、AIによる採点である。

Geminiに鑑定を評価させると、

  • ChatGPT:112/120
  • Claude:105/120
  • Moira:98/120

という結果になった。

ところが、現役占い師として私がAIを採点すると、

  • Claude:104/120
  • ChatGPT:68/120
  • Gemini:40/120

となった。

特に興味深いのはClaudeである。

AI評価105点。
実務占い師評価104点。

ほとんど変わらない。

一方、ChatGPTはAIから非常に高く評価されたが、実務評価では大きく下がった。

ここには「良い文章」と「良い電話鑑定」の違いが表れているのかもしれない。


AIは「完成された回答」を評価しやすいのかもしれない

今回だけで一般化することはできない。

ただ、少なくとも今回の実験では、AIによる評価には一つの傾向が見えた。

AIは、

論理的に整っている。
カード同士が綺麗につながっている。
文章が読みやすい。
具体的なアドバイスがある。

こうした「完成された回答」の品質をかなり高く評価する。

もちろん、それらは重要である。

しかし電話占いには、それだけでは測れない部分がある。

必要なら、カードを引く前に質問する。

相談者が何を求めているのかを知る。

占ってはいけないことなら、ただ拒否するのではなく、何なら占えるのかを考える。

相談者から得た事実と、カードから読んだものを混同しない。

そして必要な答えが出たなら、きちんと終わる。

長く話せば親切なのではない。

カードをたくさん説明すれば本格的なのでもない。

美しい文章なら寄り添えているわけでもない。

電話占いでは、その言葉の向こうに人がいる。

しかも、その人は一分ごとに料金を支払っている。

だからこそ、

「この一分は、本当にこのお客様のために必要なのか」

という感覚が必要になる。


今回の実験で一番評価したのはClaudeだった

結果として、今回AI3者の中で最も高く評価したのはClaudeだった。

104/120。

満点ではない。

個別性にはまだ改善の余地があるし、最後には少し引き延ばしも見えた。

それでも、

人の心を最初に見る。
禁忌を守る。
禁忌だからと逃げない。
占える問いへ組み替える。
カードを総合して答える。
電話を切ったあとに使える助言を残す。

ここまでできていた。

今回の実験で改めて感じたのは、占い師に必要なのは「カードを読めること」だけ
ではないということだ。

相談者は、カードの意味を聞きに来ているとは限らない。

不安を抱えて、人に話しに来ている。

だからカードを見る前に、人を見る。

そして、必要なことを伝え終えたなら終わる。

占い師が使っている時間は、同時にお客様の時間でもある。

1分220円。

その重さまで含めて考えたとき、初めて「電話占いとして良い鑑定だったのか」を
評価できるのではないだろうか。

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