占い師をしていると、ときどき、
「さて、どう答えようか」
と、一瞬だけ頭の中が忙しくなる相談があります。
特に、芸能人との恋愛相談。
「テレビの中の彼と目が合いました」
「ライブ会場で、彼が私を見て手を振ってくれました」
「一般人ですが、芸能人の彼と結婚したいです」
文字だけで見ると、なかなかの相談です。
けれど、電話鑑定では相談内容だけを聞いているわけではありません。
私が同時に拾っているものがあります。
客との関係値。
客の声のトーン。
そして、電話があったときの周囲の音。
同じような相談に見えても、この三つが違えば、私の返しも同じにはなりません。
今回は、実際にあった三つのケースをご紹介します。
CASE1 「テレビの中の彼と目が合いました」
このお客様との関係値は高め。
何度もお話ししているので、それまでの相談内容やご本人についての情報も知っています。
ご本人から、病気があることも伺っていました。
その日の声のトーンは高め。
周囲は静かでした。
お客様は言います。
「テレビを見ていたら、彼と目が合ったんです」
私の頭の中では、
(テレビなので、こちらに目線が送られるのは当然なのですが)
と思っています。
でも、口から出す言葉は違います。
「彼と目が合ったんですね」
「久しぶりだったんですか?」
「そうなんですか、久しぶりだったんですね」
そして、
「彼の思いは変わらずありますから、見守っていきましょうね」
とお話ししました。
そこで何が事実なのかを争うことはしませんでした。
CASE2 「会場で彼が私を見て、手を振ってくれました」
こちらのお客様との関係値は中くらい。
声のトーンは高め。
そして電話の向こうは、かなり騒がしい。
どうやらイベントのあとだったようです。
「彼が私を見て、手を振ってくれたんです」
とのこと。
私の頭の中では、
(ファンサービスは当たり前)
と思っています。
でも、そんなことをわざわざ言う必要はありません。
「今日はお疲れ様でした」
「彼自身も、遠くからお出掛けいただいたことを嬉しく思っていますよ」
そして最後に、
「今日はゆっくりとお休みになってくださいね」
とお伝えしました。
楽しかった一日です。
それなら、その日は楽しかった気持ちのまま終えてもいいでしょう。
CASE3 「一般人ですが、芸能人の彼と結婚したいです」
三人目。
お客様との関係値は低め。
まだ、それほど多くのお話をしていない方です。
声のトーンは中くらい。
周囲の音も中くらい。
そして、
「一般人なんですけど、芸能人の彼と結婚したいです」
と言われました。
まずは確認します。
「彼との出会いは?」
雑誌だそうです。
(マジかよ)
もちろん、これは口には出しません。
お話を聞いていくと、まだ彼本人との関係ができているわけではないことが分かりました。
そこで、
「彼自身との関係も、これから築いていかれるということなんですね」
と確認します。
(助かった)
そして、
「そうしましたら、彼のお仕事への理解を十分にしてあげることが重要ですね」
とお話しして、
「また何かありましたら、お電話くださいね」
と鑑定を終えました。
電話では、相談内容以外の情報も入ってくる
ここでいう「客との関係値」とは、特別な感覚の話ではありません。
リピートしてくださっている方なのか。
これまでにどんな相談を受けてきたのか。
私はその方について、どのくらいの情報を知っているのか。
そういう意味での関係値です。
声のトーンも、そのままです。
電話口から聞こえてくる、そのときのお客様の声。
周囲の音も同じ。
電話がかかってきたとき、その向こうから実際に聞こえている音です。
静かな部屋から電話をしているのか。
外なのか。
周囲が騒がしいのか。
電話鑑定では、相談の言葉と一緒に、そうした情報も入ってきます。
だから、文字にすれば似たような相談でも、実際の電話では同じではありません。
頭の中と、口から出す言葉は違う
占い師だからといって、何を聞いても、
「なるほど。そういうこともありますね」
と神秘的に受け止めているわけではありません。
ときには、
(マジかよ)
と思います。
当然です。
人間ですから。
でも、頭に浮かんだ言葉を、そのままお客様に投げればいいわけでもありません。
一方で、お客様の話に合わせるために、確認できないことまで事実として作ってしまうのも違います。
その場で何を聞くのか。
何を言うのか。
どこまで話すのか。
そして、どこで会話を終えるのか。
電話の向こうにいる人を見ながら、その都度考えます。
占い師の仕事は、カードを展開して意味を読むだけではありません。
相談内容だけでは見えないものを拾いながら、目の前のお客様に、今どんな言葉を返すのか。
カードを読むより、そちらの方が難しい日もあります。
そして今日も電話口では、
「そうなんですね」
と穏やかに答えながら、
頭の中では、
(マジかよ)
と思っている占い師がいるのです。

